100K Ultra Training
初めてウルトラを目指す人にも!ベテランランナーにも!
矢田夕子コーチのウルトラマラソントレーニング
第6回 インターバルトレーニングのコツ
インターバルトレーニングと聞くと、トレーニングとしてはスピードが速いので強度が高くウルトラマラソンには必要ないのではと考える方もいらっしゃると思います。
しかし連載第2回目の記事にある糖質代謝と脂質代謝ですが、実はインターバルトレーニングでもこの機能を養うことができるのです。
もちろん他にも効果はありますが、インターバルトレーニングの“コツ”と共にお話ししたいと思います。
継続して速いスピードで走ることは難しいのでリカバリーを挟んで断続的に走るトレーニングを、インターバルトレーニングと言います。
皆さんにご紹介したモータースキルトレーニングもそのうちのひとつです。
インターバルトレーニングには
・Repeated sprint training(モータースキルトレーニングはこれに含まれます)
・Sprint interval training
・Short interval training
・Long interval training
と種類があり、それぞれ走る時間や運動強度、リカバリーの時間が設定されています。
前回のUpHill intervalの次に取り入れていきたいのはShort interval trainingです。
UpHill intervalはスピードが平地よりも出ないため脚にかかる負担が平地よりも軽減できます。
ですので、UpHill intervalで慣らしてから平地のインターバルに移行していきます。
Short intervalではvVO2MAXの100〜120%の速さで30〜60秒程度走りリカバリーを挟みます。
さらっとvVO2MAXの100〜120%と言いましたが、大体どのくらいかというと3000mを頑張って走った時のアベレージペースを100%として考えてください。
例えば3000mを12分で走った方は1000m=4‘00”/kmなので4’00”/kmを100%とします。
その方の場合、Short interval で30秒間走るとすると120%の強度で3’20”/kmペースという設定になります。
240秒(4分)×100(%)÷120(%)=200秒(3分20秒) ですね。
そしてインターバルの“コツ”は・・・
リカバリーをタイムで決めず、心拍数をAT値以下に落としてからリスタートすること。
(心拍数の設定についてはこちらを見てください。)
AT値以下という運動強度では、脂質代謝が優位に動く方向へ身体が向かいます。AT値以上の運動強度で走り、AT値以下に運動強度を落とす(リカバリーを挟む)ことで脂質代謝の回路が回ります。
もちろんトレーニングの時期や何を狙うかで変化しますが、基本的には上の“コツ”を実行してもらえるとインターバルの効果がしっかりと得られます。
●普段インターバルトレーニングなどでスピードを出して走られている方
200m〜300mの距離をA T値以上の心拍数、vVO2MAXの100〜120%のスピードで走ります。レストは60秒前後ではありますが、心拍数を見てA T値以下に下がってからリスタートしましょう。始めは5本程度、だんだんと本数を多くしていってください。
ウォーミングアップはしっかりと行いましょう。
●インターバルトレーニングに慣れていない方
ファルトレクといって、起伏のあるところを走るトレーニングをします。ややアップダウンのあるコースで例えば1分速く走り、1分遅く走る、を繰り返すようなトレーニングです。ペースはご自分の感覚で上げ下げしましょう。ウォーミングアップを行ったのち始めは10分程度、慣れてきたらだんだんと時間を増やしてください。インターバルの心拍の上がり下がりに慣れていない方は、まずここから始めてみましょう。
ウルトラマラソンでも速く走るトレーニングは必要ですよ! ぜひ取り入れてみてください。
コラム:水分補給
私は昔、部活動の時に水を飲むと怒られた世代ですが(笑)、いま振り返ると本当に危ないなと思います。
人は、暑い時や運動強度が高い時、熱の放散をしなくてはいけません。体内の温度が上がると機能障害が起こるからです。発汗するのはこのためです。
発汗したら、その分の水分を補わなければ熱を放散する仕組みが回らず、熱中症になる可能性が高くなります。
脱水の症状は
・全身倦怠感、脱力感
・尿量の減少
・口渇
・血圧低下
・発汗の消失
などが挙げられますが、レース中やランニング時のチェックとして、尿量の減少や濃さ、また爪を白くなるまで押し元の色に戻るまでを計測してみてください。2秒以上かかったら脱水の可能性があります。
脱水の予防だからといって水分だけを摂取すれば良いというものではありません。
発汗時は水分と電解質が体から失われます。その状態で水分だけ摂取すると身体の体液が薄まるので、それもまた脱水と言えます(低張性脱水)。
また、水分が多く失われると身体の中の電解質濃度が高くなった状態になり、同じように脱水の症状が現れます(高張性脱水)。
水分摂取の際は、水分だけではなく電解質もバランス良く摂取することを意識していただきたいと思います。
トレーニング指導:ジャパンウルトラマラソンチャレンジシリーズ公認コーチ・矢田夕子
実業団選手(パナソニック女子陸上競技部)を引退後、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得し、2017年4月より東京都多摩市にトレーニング兼治療院施設「TREAT」をオープン。競技者としての経験も活かしながらトレーニング&ケアを市民ランナーに指導している。自身もトレイルランニング、ウルトラマラソンを中心にランナーとして活動中。2016年野辺山高原100kmウルトラマラソン・優勝。2019年サロマ湖100kmウルトラマラソン・8時間33分47秒。ザムストブランドアンバサダー。