100K Ultra Training

初めてウルトラを目指す人にも!ベテランランナーにも!

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矢田夕子コーチのウルトラマラソントレーニング

第5回 登り坂を走る理由

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登り坂! 聞くだけであまり良い印象がない方も多いはず。走ると平坦よりもなんだか辛いし、スピードも上がらないし・・・。
そう感じている人がほとんどかと思います。
でも登り坂を使ったトレーニングのメリットももちろんあるのです!

登り坂を使ったトレーニング・・・よく聞く「坂ダッシュ」と言われる登り坂でのスプリントのトレーニング(以下UpHill インターバル)は、パワー発揮を上げるトレーニングに最適です。
パワーって何?という話になってくるのですが、“馬力”的なイメージをしていただけるとわかりやすいかもしれません。
世代の方は鉄腕アトムを思い出してください。100万馬力ってなんとなく強そうですよね?(若い方はご存じないとは思いますが・・・)
ランニングも同じく、「発揮できるパワー」=馬力が高い方が有利です。

前回はスピードの向上をお話ししましたが、パワーも一緒です。200w(ワット=パワーの単位)を出せる人が100wで走るのと、200w出せる人が150wで走るのとではキツさが違います。
出せるパワーの天井は上げておいた方が良い、ということです。

また、ウルトラマラソンでもコースにアップダウンの多いところを走るのならば、コースプロフィールに慣れるよう起伏のトレーニングはしておいたほうが良いですよ!

普段インターバルトレーニングなどでスピードを出して走られている方
UpHill インターバルをしましょう。ご自身がスプリント動作できる傾斜(4~8%推奨)の坂を使い、50〜100mの距離をとってインターバルを行います。
1本1本きちんとスプリント動作を行わないとパワーが上がりませんので、リカバリーはタイムを気にしないで、しっかりリカバリーを取ってスプリントできる準備ができたらリスタートしてください。
5〜10本を目安に行って欲しいのですが、あまりにも坂が登れなくなったら中止しましょう。

普段インターバルトレーニングなどでスピードを出していない方
まずは前回の記事でも書いたようにウィンドスプリント→モータースキルトレーニングを行なった上でUpHillのインターバルを行ってください。
登りに慣れていない方は、最初は起伏のあるところを選んでジョグなど行い、登りの負荷に慣れていきましょう。

登り坂が嫌いな方も、登り坂トレーニングの大きな(!?)恩恵を受けるためにぜひ走ってみてくださいね!

コラム:補給食のタイミング

補給食の選択に悩む方は多いと思います。ウルトラマラソンとなるとマラソン以上の距離を走りますので、エネルギー切れを起こさないよう補給は必須です。
連載第2回の記事で書いているように、ウルトラマラソンはどちらかというと脂質を使った運動強度(ゆっくりな速度でのラン)で走るため大量の糖質を摂る必要はありませんが、それでも、人によって脂質と糖質の使用割合は変化しますのでトラブルのないように糖質を摂取していく必要があります。

避けたいトラブルとしては
・インスリンショック(インスリンとは血糖値を下げるホルモンです)
・嘔吐
・下痢
・エネルギー不足
などがあります。

ランニング時は血液中の糖を使いエネルギーに変えています。身体に貯蓄してある糖を分解しながらエネルギー補充して走っていきますが、不足したエネルギーを補給で補う際に、インスリンが大量に分泌されてしまい低血糖状態となって倦怠感などの症状が出てしまいます。これがインスリンショックです。
回避する方法としては、運動開始30分前の糖質摂取は避けること(1時間前や直前は大丈夫です)、こまめな補給。また、脂質を先に摂取するとインスリンが上がりにくいと言われています。

嘔吐や下痢は様々な原因が考えられますが、糖質(グルコース)の吸収量は1分間で1g程度しかなく、この吸収量を超えて摂取すると嘔吐や下痢が起こりやすいことがわかっています。

補給食は、レースに摂る予定のものを必ずトレーニング中にも摂って身体を慣れさせていきましょう!

トレーニング指導:ジャパンウルトラマラソンチャレンジシリーズ公認コーチ・矢田夕子

実業団選手(パナソニック女子陸上競技部)を引退後、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得し、2017年4月より東京都多摩市にトレーニング兼治療院施設「TREAT」をオープン。競技者としての経験も活かしながらトレーニング&ケアを市民ランナーに指導している。自身もトレイルランニング、ウルトラマラソンを中心にランナーとして活動中。2016年野辺山高原100kmウルトラマラソン・優勝。2019年サロマ湖100kmウルトラマラソン・8時間33分47秒。ザムストブランドアンバサダー。