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矢田夕子コーチのウルトラマラソントレーニング

第2回 ランニング時におけるエネルギー代謝

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前回は、トレーニングを計画することの大切さをお伝えしました。
トレーニングを計画したら次は実行に移ると思います。
ランニングしている時に身体に何が起こっているのかを知っておくことは、トレーニングの効果を得るためにも重要です。
今回は栄養面での変化をお伝えします。

2つのエネルギー源の違いと、使われるタイミング

まず、ランニングする際にエネルギー源になる栄養素は、大きく分けて主に2つ。
米やパン、チョコレートなどに多く含まれる「糖質」、そしてチーズやナッツ、肉などに多く含まれ、私たち自身も身体に蓄えている「脂質」です。
糖質から得られるエネルギー量は4kcal/g、脂質から得られるエネルギー量は9kcal/gです。

あまり激しくない運動強度(ゆっくりな速度でのラン)では、エネルギー源として脂質が主に使われ、その産生には酸素が消費されます(有酸素運動)。エネルギーになる速度が遅くてピークに時間がかかり、また体内に蓄えられた豊富な脂質(脂肪)を活用するので、エネルギーが持続しやすい。ですから、ダイエットには「有酸素運動を持続して脂肪を燃やすのがよい」と言われるわけです。ゆっくり速度のランでは「脂質代謝」、つまり脂肪消費が身体のなかで起こっているのです。

一方、運動強度が高い時(はやい速度でのラン)では酸素の供給が追い付かなくなり、血液中の乳酸が急激に増加し始め、エネルギー産生は糖質からが中心となります(無酸素運動)。エネルギー源としては糖質が優位になりますが、この「糖質代謝」は脂質代謝よりもすぐにエネルギーを生み出せる分、枯渇するのも早いのが特徴です。身体にたくさん蓄えておいてジワジワ使うというものではないので、速いスピードで走り続けるためには、適切な糖質エネルギー補給が必要です。

さて、ここで「運動強度と心拍数とエネルギー源の関係」を表した下の図を参照ください。
通常、運動強度が高くなれば心拍数はだんだんと増え上昇します。
脂質代謝が起こりエネルギー源として最も脂質が優位な閾値(いきち=物事の境目となる値)をAeT値、脂質をエネルギー転換することが難しくなり糖質代謝がほぼ100%になる閾値をAT値といいます。
AeT値とAT値の間は、エネルギー源である「脂質:糖質」のバランスが変わっていきますが、基本的には脂質代謝が優位です。とはいえ、糖質代謝がまったくないわけではないため、ゆっくりペースでもウルトラマラソンの練習やレースのように長く走れば、空腹感は出てきますし補給が必要になります。
レースの運動強度によってエネルギー源は変化するのでそれに応じたトレーニングが必要です。

閾値に基づく運動強度でトレーニング効果をあげよう

2つの閾値を知り、その閾値での心拍数をトレーニング指標にすることでトレーニングの効果がしっかりと得られます。

たとえば、フルマラソンではAT値のペースで走り続けられればベストパフォーマンスと考える方がいるかと思うのですが、そうです、その通り! スピードを維持できる効率よい走り、その目安になるのがAT値(心拍数)ですから、このペースを上げていくことがすなわちフルマラソンにおいて「バテずに速く走れるようになる」ということです。AT値付近のトレーニングを取り入れるような方法(ペース走など)が効果的でしょう。

また、AeT値のほうは、この運動強度レベルで脂質代謝が高まるといわれていますので、トレーニング計画の最初の時期は特にここの心拍数を管理したプランが必要です。脂質代謝を発達させることで、そのあとのフェーズでの強度の高いトレーニングにも耐えうる身体づくりが可能になるからです。
ダイエットから始めるビギナーにしても、主観的な「ゆっくり」で脂肪がどんどん燃えるわけではありません。心拍数が低すぎるジョギングは効率的ではないですから、当初の練習の大半を占めるジョギングメニューこそ、AeT値を意識しましょう。

AT値とAeT値の正確な指標を測定しようとすると呼気ガス分析装置のある施設などで測定しなくてはいけませんが、簡易的に閾値の出せる数式があります。

AT値=(220-年齢-安静時心拍数)×80(%)+安静時心拍数
AeT値=(220-年齢-安静時心拍数)×60(%)+安静時心拍数

(※安静時心拍数:寝起きもしくは横になるか座るかで5分以上安静にした状態で測った安静時の心拍数)

<例>
Aさん:53歳 安静時心拍47
(220-53-47)×0.8+47=143 AT
(220-53-47)×0.6+47=119 AeT

Bさん:45歳 安静時心拍60
(220-45-60)×0.8+60=152 AT
(220-45-60)×0.6+60=129 AeT

Cさん:38歳 安静時心拍52
(220-38-52)×0.8+52=156 AT
(220-38-52)×0.6+52=130 AeT

この2つの閾値の心拍数を使ってトレーニングすると、やみくもに走るよりも狙った練習の効果が得られます。
上の公式でAeT値の心拍数が129だったBさんが脂質のエネルギーをしっかり使うトレーニング(LSDなど)をしたいとすると、心拍数129でランニングをすれば狙った効果が高まるということです。

トレーニングを計画し実行する前に、「達成したいトレーニング効果」を理解して指標を決めておきましょう!

コラム:シューズの選び方

ランニングシューズを選ぶ際、初心者は厚く!サブ3の人は薄く!というのが通説です。
ですが、シューズ選びは人それぞれ。必ずしも通説通りではありません。

本来、人間は裸足でも走れる動物です。それが草鞋(わらじ)や下駄(げた)を経て、足袋(たび)などになりシューズを履くようになりました。
今では機能的なランニングシューズも出ていますが、それらは履くことで人間本来の機能を奪っているともいえます。
もちろん弱点を補う武器にはなりますが、頼りっぱなしは良くありません。

それを踏まえたシューズ選びのポイントはコチラ!

  1. これからランニングを始める人 →薄いシューズ
  2. 厚いシューズを履いている人 →厚いシューズからだんだんと薄くする
  3. 薄いシューズを履いている人 →薄いシューズで継続
  4. 膝から下に痛みのある人・・・痛みのあるうちは厚いシューズを履き、治ったらだんだんと薄くする。

痛みのある人は、まず足を保護して痛みを取るようにします。
厚いシューズを履いている人は、すぐに薄めを履くのではなく徐々に薄くしていきましょう。

人間としての機能を高めつつ、シューズはあくまでも武器として使いましょう!!

トレーニング指導:ジャパンウルトラマラソンチャレンジシリーズ公認コーチ・矢田夕子

実業団選手(パナソニック女子陸上競技部)を引退後、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得し、2017年4月より東京都多摩市にトレーニング兼治療院施設「TREAT」をオープン。競技者としての経験も活かしながらトレーニング&ケアを市民ランナーに指導している。自身もトレイルランニング、ウルトラマラソンを中心にランナーとして活動中。2016年野辺山高原100kmウルトラマラソン・優勝。2019年サロマ湖100kmウルトラマラソン・8時間33分47秒。ザムストブランドアンバサダー。