100K Ultra Training

初めてウルトラを目指す人にも!ベテランランナーにも!

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川内鮮輝選手の「ウルトラマラソンの世界へ、ようこそ!」

第2回 ウルトラマラソントレーニングには60km走を

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最低3カ月のトレーニング期間を

フルマラソン出場の場合、通常は一定のトレーニング期間を経てレースに臨むと思います。スピード練習や週末のロング走などの強度の高い練習と、ジョグ等の低い強度の練習や休養を組み合わせ、1週間、1カ月単位でトレーニングメニューを組んでいる人も多いでしょう。ウルトラの練習も、基本的には同じ組み立てだと思います。ただ、レースの距離が倍以上あるということで、その対応のために中身はちょっと違ってきます。

長い距離を走る練習は必須です。フルの練習でロング走を行っていたのなら、100kmではその倍の距離(私の場合、フルでの30km走を50〜60km走に)となります。トレーニングスケジュールを考えることも重要です。とはいえ、難しいメニューを組む必要はありません。必要なのは最低3カ月の準備期間を設けること。フルの場合、1カ月程度のトレーニングでもレース出場ができますが、100kmの場合は困難です。またフルマラソン未経験者やまだ走力に自信のない人は、4〜6カ月の準備期間を取ってください。

3カ月のうち、2カ月でウルトラを走るための超ロング走を行い、最後の1カ月でトレーニングの疲労を抜きつつレースに備えます。100kmに挑戦する人は、60km走に取り組んでください。いきなり行うのは難しいので、最初の1カ月は40km走くらいから始め、2カ月目に60kmに伸ばすのがいいでしょう。

しっかり走り切ることが重要なので、レースペースより遅いジョギングペースで。途中休憩や補給もOKです。ただ、60km走は身体への負担が大きいので、走り終わったら十分な休養が必要、次は2週間以上空けて行ってください。

60km走を2回走れば距離への耐性ができる

60kmは最低2回走って欲しいですね。なぜなら60km走はかなりきついため、1回走っただけではダメージが大きく、心身ともにくたくたになってしまいます。そして「60kmでこんなに辛いんだ。100kmなんて…」と自信を失ってしまう可能性もあります。もう1回60kmを走ることで、前回のトレーニングで距離に対する耐性ができたことが分かります。脚が動き、身体が生まれ変わったような、1回目とは違った自分に出会えるのです。

この準備期間は、3カ月以上とればそれなりの効果もありますし、60km走も疲労回復に気をつけ期間を開ければ回数を増やしても大丈夫ですが、要は負担の大きい「異常な練習をしている」自覚を持って行うことが大切です。

スピード練習もある程度行った方がいいと思います。これはスピードをつけるためというより走りにキレと余裕度を出すためです。長い距離ばかり走っていると動きが小さくなってしまうので、スピードを入れて効率的な動きを身につけて、走りの相乗効果を出すことが目的です。ハールマラソンや短い距離のレースを、スピード練習として走ってもいいですね。

これらの練習以外は、ジョグやストレッチングなどの休養日とします。一番良くないのは、トレーニングし過ぎて、疲労を残したまま練習を続けたり、レースに臨むことです。そのため、ロング走はレース1〜2週間前までとし、レースが近づくに向けて一度に走る距離も減らしていきます。レースの日に疲労が残っていないようにすることが理想です。

準備不足だった初100km

誰もが初フルマラソン完走のことはよく覚えていますよね。ウルトラマラソンの初完走は、そのための準備やゴールまでの行程が長くなる分、印象はフルに比べ、より強いものになると思います。

私のウルトラ(100km)完走は、2015年6月の隠岐島100kmウルトラマラソンでした。このレースでは、事前練習も不十分、走り込みもできていなく、それでも記録を狙うという、はっきり言って100kmを甘く見て、初ウルトラに臨んでしまいました。

1km4分を切るペースでスタート。序盤は調子よく走っていたのですが、40kmを過ぎる頃から脚が動かなくなりました。終盤には1km11分に落ち、一般の市民ランナーはもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんのランナー、果てはゴミを拾いながら走っていたボランティアのランナーにも抜かれてしまうほど。大変辛い思いをして11時間20分でゴールしました。

失敗の原因は、準備不足。その反省点と無念さが、以降のレースに生きていると思います。

トレーニング指導:川内鮮輝(かわうち よしき)

1990年生まれ。プロランナーの川内優輝さんを長男とする川内3兄弟の次男。四万十川100kmウルトラマラソン、隠岐の島100kmウルトラマラソン、柴又100kmなどで優勝。ベスト記録は、マラソン2時間15分50秒 (2021年びわ湖毎日マラソン)、100km6時間28分35秒 (2018年サロマ湖100kmウルトラマラソン)。