100K Ultra Training
初めてウルトラを目指す人にも!ベテランランナーにも!
矢田夕子コーチのウルトラマラソントレーニング
第12回 レース時の運動強度の目安
さて、いよいよレースの日。みなさんは、こんな感じで走ろうかな、と計画を立てているでしょうか?
ゆっくりとしたペースで入って後半上げていこうかな?とか、始めから頑張ってどこまでペースをキープできるか!など、それぞれのレース計画があるかと思います。
しっかり最後まで力を出し切って走りたいのであれば、レースを走るにあたり「運動強度の目安」を用いてレース展開することをおすすめします。
始めから速いペースで入りすぎてしまい、後半潰れた…なんて経験がある方も少なくないと思うのですが、たしかに、運動強度が高すぎてしまうと身体の変化が起こりやすいので、距離の長いウルトラマラソンでは特に、後半の身体への影響が大きくなります。
しかし逆に運動強度が低すぎれば、不完全燃焼で終わることも。
どの運動強度を用いて、どのくらいの運動強度を目安に走るか?を決めて走ると、自分の力を出し切りながら走ることができると思いますので、ぜひレース運びの計画をたてるときの参考にしてみてください。
<どの運動強度を用いるか?>
今はGPSウォッチが進化しているので、ほぼ正確な「ペース」の他にも「心拍数」や「パワー」を測ることができるものも多くなっています。
この3つのどれかを運動強度の目安として用いる際の、メリットとデメリットを考え使用していただければと思います。
「ペース」はみなさんご存知の通り、1km何分という指標でわかりやすいですよね。
また最近の時計だとGPS付きが当たり前になってきたので、走るコースに距離表示がなくてもご自分のペースがわかるかと思います。
デメリットとしては、体調や気候など内的な要因も外的な要因も考慮されないことです。
このペースで行きたい!と思っていても、その日必ずそのペースでいけるとはかぎりません。
「心拍」は、今は手首で測れる時計も多くなってきたので取りやすくなったと思います。
体調が反映されるので、その日の体調に合わせてパフォーマンスを発揮することができます。
デメリットとしては、暑さなどの外的要因で上がりやすくなること。
暑さ、また疲労によって後半上がってきてしまうこともあるので、それも考慮して目安を決める必要があります。
そして「パワー」です。ランナーの方はなかなか聞きなれないものかもしれません。
簡単にいうと、“そのときその瞬間の努力度”が数値で出ます。
外的要因に左右されないので指標として持ちいりやすいのですが、パワーメーターがないと分かりません。
3つとも、メリットもデメリットもあるので、自分が使用しやすい目安を見て走りましょう。
<どのくらいの運動強度を目安に走るか?>
では、どのくらいの運動強度で走るかです。
もちろん呼気ガス測定などの測定値を用いたほうが正確ではありますが、自分が測定できる範囲内で目安を出していきましょう。
さて指標に用いる数値をマラソン時のアベレージを元に決めるとすると、「ペース」はマラソンペースの運動強度のおよそ80%程度。
サブ3.5の方は、だいたい10時間25分でゴールできるかなという予想です。
「心拍」ですとマラソン運動強度の85%。マラソン時アベレージの心拍が160であれば、136程度を指標に走ると、最後まで潰れずにゴールできるだろうという予想です。
「パワー」はマラソンの運動強度の70%程度。マラソン時アベレージが220wだとすると154w前後で押して行くとうまく走れると思います。
このように、指標をどれにするか決め、自分に「合った」運動強度を用いると潰れることなく力を出し切って走ることができると思います。
とはいえ…運動強度が合っていなくても走り切れてしまう人もいるので(笑)、そこはいろいろと試しながら自分にあった走りを見つけていきましょう!
コラム:レース後のリカバリー期間
レースの後すぐにまたレースを走る方って多いですよね。
短いレースはさておき、ウルトラマラソンのような長いレースを続けて走ることは普通はできません。
できたとしても結果が伴わないか怪我をすることが多いと思います。
それくらいレースは身体にかかる負担が高いということ。なんといっても自分の“一生懸命”で走るのですから!
レース後はしっかりとリカバリー期間…移行期とも言いますが…これを十分に取って疲労を抜き、それからまたランニングをしてほしいと思います。
トレーニングやレースによってどのくらい負荷がかかって、どのくらい疲れているかというものを数値で見ることもできます。
ただ、これは計算しないといけないですし、アプリも契約してというひと手間が。
ということで、だいたい3kmで1日リカバリー期間を設ける! こう考えましょう。これを目安にリカバリーしてほしいと思います。100kmのウルトラマラソンだと1ヵ月ちょっとになりますけれど、それくらい身体には負担がかかっているということです。
より長くランニングライフを楽しむためにも、リカバリー期間をしっかり設けましょう。
トレーニング指導:ジャパンウルトラマラソンチャレンジシリーズ公認コーチ・矢田夕子
実業団選手(パナソニック女子陸上競技部)を引退後、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得し、2017年4月より東京都多摩市にトレーニング兼治療院施設「TREAT」をオープン。競技者としての経験も活かしながらトレーニング&ケアを市民ランナーに指導している。自身もトレイルランニング、ウルトラマラソンを中心にランナーとして活動中。2016年野辺山高原100kmウルトラマラソン・優勝。2019年サロマ湖100kmウルトラマラソン・8時間33分47秒。ザムストブランドアンバサダー。