100K Ultra Training

初めてウルトラを目指す人にも!ベテランランナーにも!

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矢田夕子コーチのウルトラマラソントレーニング

第11回 テーパリングという方法を用いたピーキング

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トレーニングをがんばって進め、いよいよレースも近い!といった時期、みなさんはどうトレーニングしていますか?
レース当日、自分の目標をしっかりと達成したいと思っている方は多いはず。でも肩に力が入ってしまい、レースの数日前までトレーニングをいっぱいしてしまう…なんて方もいますよね。
今回は、レース当日に向けてどのようにトレーニングをするかを書いていきたいと思います。

距離にもよりますが、ウルトラマラソンの場合2〜3週間前からはトレーニング負荷をコントロールしてピークを合わせることが多いです。
質(速度など)は変化させず、量(時間、距離など)は少なくする『テーパリング』という手法を用いることが一般的で、それまで蓄積した疲労を取りつつ、身体には刺激を入れながらレースにピークを合わせていきます。

テーパリングによるトレーニング負荷のコントロールの方法もいろいろあります。主要な3つの方法について、こちらの図をご覧ください。

まず直線的テーパリング(図の中の緑色の線)は、レースに向けて徐々にトレーニング負荷を減らしていく方法です。負荷の減少の仕方が直線的で、トレーニング量は他の手法よりも比較的多くなります。

次に、段階的テーパリング(図の中の赤い色の線)は、いきなりトレーニング負荷を大幅に減少させ、そのあとは一定の負荷量を保つ方法です。

そして3つめ、指数関数的テーパリング(図の中のオレンジ色と青い色の線)は、初期にトレーニング負荷を大幅に減少させ、その後はなだらかに負荷をコントロールしながら減らしていく方法です。この方法は初期の負荷の減らし方の度合いでさらに細かく「遅い」「速い」に分かれます。

では、どれがいいの?という話になりますが、文献をまとめると指数関数的テーパリングで序盤に負荷を急激に減らし、その後ゆるやかに調整していくことが推奨されています。

量や質、頻度をポイントとしてまとめると

・質であるトレーニング強度は維持、もしくは高める
・頻度は80%以上に保つ
・トレーニング量はテーパリング全体で40〜60%落とす

です。指数的テーパリングを用いて以上のことを意識するとピークが上手く合うと思います!

ただしテーパリングの落とし穴としては、「それまでちゃんとトレーニングしてきたのか」ということがありますので注意してください。
さほどトレーニングをしていない人がテーパリングを用いても、あまり意味がありません。
それまでにしっかりトレーニングすることでテーパリングの恩恵があります。
なので、レース前になって焦ることのないよう、やはり日々のトレーニングがとても重要ということになります!

コラム:睡眠というリカバリー方法

リカバリーにもさまざまな方法がありますが、その1つとして睡眠は重要です。
睡眠はヒトの活力を回復させるために必要不可欠です。
またアスリートにとっても、身体的にも精神的にも回復を即すことができる重要なリカバリー方法です。
研究の一つによると、トレーニングは変えずに睡眠を長くしただけでパフォーマンスが上がったというデータもあります。

ただ、寝つきが悪い、途中で起きてしまうなどの睡眠障害のある方も多いと思います。
睡眠障害は炎症症状や交感神経の活動が増大し、筋肉の修復などを阻害してしまうことがあります。

睡眠をより良く取るには
・交感神経が高ぶるようなことを夜に行わない
・就寝時間、起床時間を日々同じようにする
・睡眠をとる部屋は睡眠をとる部屋専用にする
などがあります。

特にランナーの方で睡眠障害になりやすい人は、夜にトレーニングをする方。
ランニング中は心拍が高まると必ず交感神経優位になります。トレーニングが終わった際に交感神経を抑制できればいいのですが、ほとんどの方は切り替えがうまくいかず、交感神経優位なままの方が多いです。

レース後、疲れているのに眠れない!なんて方も多いはず。
これは交感神経が優位になっているからと思われます。
就寝の前には必ずリラックスすることを心がけてみましょう。

トレーニング指導:ジャパンウルトラマラソンチャレンジシリーズ公認コーチ・矢田夕子

実業団選手(パナソニック女子陸上競技部)を引退後、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得し、2017年4月より東京都多摩市にトレーニング兼治療院施設「TREAT」をオープン。競技者としての経験も活かしながらトレーニング&ケアを市民ランナーに指導している。自身もトレイルランニング、ウルトラマラソンを中心にランナーとして活動中。2016年野辺山高原100kmウルトラマラソン・優勝。2019年サロマ湖100kmウルトラマラソン・8時間33分47秒。ザムストブランドアンバサダー。